裁判関連 » 2005/11/21 意見陳述 原告 飯岡美和子

平成17年11月21日
原告   飯岡 三和子

 私の祖父は、東急大井町線がまだ走っていないときにここ、二子玉川に土地を借りて住み始めました。私は、ここで生まれ、戦争を鋏み、出たり入ったりして、現在も暮らしています。子どものころ、都心に出かけ、頭が痛くなって帰ってきて、二子玉川の駅について深呼吸をすると、頭の痛いのがいつの間にか治っていたという経験を何度もしたことを覚えています。都心のめまぐるしい騒音と排気ガスだらけの中から、玉川に降り立つと、空が広く、多摩川から心地よい風が吹き、人波も少なくほっとしたものです。
 多摩川で水遊びをし、松林で風の音を聞き、二子玉川園ができる前に広い運動場だった時期には、野球もしました。天気の良い日には多摩川に向かって立てば、遠く富士が季節ごとの美しい姿を見せ、日没はうっとりするほどの光景でした。(これは今も変わりません)川の上はさえぎるものがないので、空は広く、空気もきれいでした。私はこういう自然環境に育てられました。
 大きな道路(国道246号線、13間道路といっていました)に車がたくさん走るようになり、多くの人が駅を乗り降りするようになっても、駅の東側と河原は比較的静かで、休みの日には、川ときれいな空気に惹かれて若者や家族連れが集う場所になっています。多摩川に併行して連なる国分寺崖線は、世田谷の誇る緑のベルトです。そこに根付いている大木は、世田谷区の許可がなければ伐採ができないほど大切にされ、世田谷区も国分寺崖線保全の条例を制定して守ろうとしています。もっとも、その国分寺崖線には保全条例ができる前に、マンションが立ち始め、自動車の流入で大気汚染も進んでいますが、それでもまだ、許容の範囲かなと思っています。なぜなら、風致地区のため、マンションはせいぜい5階建て、空も見えるし、河原まで足を伸ばせば、きれいな空気が吸えるからです。東京では、これくらいは、我慢です。
 このような環境の二子玉川に、この再開発計画が明らかになった時の地元のショックは大きく「なんで? ここだけ150メートルなの?」「都心ならいざ知らず、3棟も5棟もの超高層ビルは、異常な光景だ」「この地域には、全然合わない」などの声が聞かれました。私たちの被害は、自分の家の前に超高層ビルができて、空が狭くなり、圧迫感がいやだというだけではなく、この巨大な開発で、街全体が壊されるということが我慢できないのです。
街が壊されるというのは、建物が壊されるだけではありません。昔からの顔見知りの商店が立ち退かざるを得ないことも街壊しです。多くの人達は、ここで商売をしたい、ここに住み続けたいと言いつつも、最終的には立ち退かざるを得ない内容に、怒り、諦めかけています。
 人間の生活を犠牲にし、どこにでもあるような高層を含むコンクリートの街を作ることは見直して欲しいと、これまで東京都、世田谷区、東急に申し入れてきましたが、もう、決まっていることだから、折角ここまできたのだから、と理由にもならない説明でした。なぜ、高層が必要なのか、の説明はありませんでした。
 最後まで反対している地権者の声を無視して、事業組合が認可されるに及んで、やむにやまれぬ思いの周辺住民の皆さんと共に、提訴した次第です。

 私は、保育者として幼い子どもたちの育ちの手助けをしています。子どもたちには、優しくたくましく育ってほしい、自分も相手も大切にするような人になってほしいと思っています。そのためには、想像力を働かせることが大切だと思います。人を叩いたら相手がどんなに痛いか、やられてみなければ判らないではなく、相手の痛みを見て、想像することができる子どもになってほしいと思います。
 人間だけが、現在や過去から予測したり、想像したりできる脳を持っているのに、巨大な構造物を作ってしまったら、50年後、100年後それを維持していけるのか、考えることが何故できないのでしょうか。日本全国で破綻して、後始末に苦慮している経験をどうして生かせないのでしょうか?
 私は、今なら間に合うと思います。どこにでもあるような、駅ビル、高層マンションではなく、国分寺崖線と現在ある多摩川を活かして、関係者の意見を採り入れた街づくりに切り替えることができると思います。
 これは、専門家も言っています。社団法人全国再開発協会が平成13年に発表した「軽装備再開発に関する検討調査報告書」によれば、

  • 中心市街地の置かれている状況の変化
  • 企業環境の変化などにより

「今までの再開発事業の手法だけでは、街づくりができなくなってきている。全国の市街地の状況と再開発事業の経済環境を考えると、今までと違った発想による街づくり手法が必要となってきている」と述べています。これは、当再開発計画にも関わっている(株)アールアイエーの宮原義昭氏の文章です。
 また、社団法人再開発コーディネーター協会による「新たな再開発のあり方に関する提言」によれば、
「再開発の基本目的を「高度利用と都市機能の更新」から「個性的な町並み景観の形成と持続的なコミュニティへの再編」に転換すると共に、高度利用による保留床処分を前提とした制度を抜本的に見直すべきである」と述べています。
 このような専門家の力を生かして、後悔のない街づくりに私たちも関わっていきたいと思います。

以上

このページのトップへ戻る