裁判関連 » 2005/11/21 意見陳述 原告訴訟代理人 渕脇みどり弁護士

2005年11月21日
原告訴訟代理人   弁護士 渕脇 みどり

 原告代理人の弁護士 渕脇みどりです。ただいまお二人の原告の意見陳述を受け、本件再開発事業、及び本件訴訟の特質を申し述べます。

1.本件再開発事業の特質は大きく言って以下の2点です。

 ひとつには施行者である被告再開発事業組合は組合という形は取っていますが、事業予定地の85%以上を東急電鉄、東急不動産らの東急グループが所有しており、その主導の下、一私企業の利益遂行目的で遂行されてきているため、組合員の中には、設立認可申請にも同意しなかった明確な反対地権者、及び、具体的な権利変換に応じない実質的反対者をふくめると、相当数の反対者がおり、そもそも地権者の真の総意に基づく再開発とはいえないということです。
このことは昭和57年頃から準備されながら、平成12年にようやく都市計画決定され、さらにそれから被告組合の設立認可までに5年いう長期間を要し、その後も本年3月4日に設立認可決定を得ながら、8ヶ月を経過した現在も未だに権利変換手続きに進展がないことからも明らかです。
もう一点はその事業規模が地域にそぐわない、六本木ヒルズの広さに匹敵する11.2ヘクタールという巨大ともいうべき超大規模なものであり、さらに風致地区の周辺環境をまったく顧みず、最高49階建て、地上150mという超高層マンションを含む7棟ものビルを乱立させるという異様な事業内容であるため、まち全体の自然、文化、景観を破壊し、周辺住民の権利を著しく侵害すると共に、総額700億円という莫大な公金が支出されようとしていることです。
これは既に原告の意見陳述で明らかにされたとおり、原告らは到底受忍することはできないものです。

2.次に本件訴訟の特質を申し上げます。

従来、都市計画事業や、再開発事業については様々な理由で、地権者及び、周辺住民が、自らの権利侵害や、事業の違法性を訴えて、訴訟を提起してきました。しかしながら、行政訴訟において、行政処分を争う場合には、そもそもの行政行為の処分性に始まり、原告適格や、出訴期間など要件が厳しく限定された上に行政に、広い裁量の範囲が認められ、取り消し判決がでても、差し止めや、既に遂行した工事の原状回復の効力はないとされ、原告らの権利を守る道は極めて厳しいものでした。
しかしながら、本件事業のようにその事業が都市再開発法に著しく違反し、しかもこれによる周辺住民の権利侵害が受忍限度を超える場合には、その事業の遂行は不法行為として一般の建築行為による不法行為と同じく、民事訴訟により差し止めを命じうるものであります。
このことは、過去の行政行為が取り消されないことと何ら矛盾するものではありません。被告である再開発事業組合は、将来に向かって都市再開発法第38条により事業計画若しくは事業基本方針を変更することができるからです。
本件訴訟の特質はまさにこの点にあります。
第1に原告が全て再開発事業地の地権者ではなく周辺住民であることです。
「まちづくり」にとって住民はまさに主人公なのです。
「まち」とは自然、歴史、文化の総合的な空間かつ社会的システムであります。憲法が定める13条の幸福追求権、25条の健康で文化的な最低限の生活を営む生存権 からも、環境、景観がまもられ、心身共に健康で、防災対策上も安全で住みやすいまちを住民自身が作っていくことはまさに住民の権利であります。このような総合的な概念である「まち」は住民の共有の資産であり、宝なのです。
第2に実質的な権利侵害を阻止する実効性を確保する上でも、違法、かつ有害な再開発事業について住民が直接に差止請求権を有することは必要不可欠であり、当然にみとめられるべきであります。この2点を確認する意味でこの訴訟は重大な意味を持ちます。

3.最後に本件訴訟にあたり、司法に期待することを述べます。

まちづくりの概念も時代と共に移り変わってきました。都市再開発法が制定された昭和44年当時は、土地の高度利用の必要性が叫ばれ、その後、さらに建築規制全体の規制緩和の流れ、バブル経済 などの影響を受け、次々に広い空を切り裂くような超高層ビルが建設されるようになりました。
 しかしながら、昨今世田谷区のまちづくり条例や、平成16年の景観法の制定に見られるように、今やまちづくりにとって実現すべき価値は何かという価値観が大きく変わってきました。
超高層ビルについての、様々な問題点も実証されるようになりました。経済性の追求のみの観点から、高層ビルを乱立する本件再開発は、「まちづくり」ではなく住民が長い歴史の元に築きあげてきた財産である「まち」の破壊に他なりません。
原告66名及びこれを支援する日本中の多くの国民は、司法がかかる時代の趨勢を適格に認知し、本件事業の違法性を断罪し、真に公共の福祉に資する再開発事業が行われるよう、充分に審理を尽くし、将来にわたるまちづくりの理念を実現するためにも、本件再開発事業の差し止めを命ずる判決を言い渡されることを心より切望しています。

以上

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