裁判関連 » 2009/04/24 二子玉川住民訴訟口頭弁論要旨

平成19年(行ウ)第160号公金支出差止請求事件
原告飯岡三和子 外132名
被告  世田谷区長

口頭弁論要旨

東京地方裁判所民事第3部御中
             2009年4月24日
渋谷区桜丘町4−23桜丘ビル8階
渋谷共同法律事務所
TEL03−3463−4351
FAX03−3496−4345
              弁護士 淵脇みどり

  1. 原告ら住民は、長年二子玉川の地で生活し、精一杯働いて、多額の税金を支払っています。昨今の経済情勢の中、住民の重税感はもはや限界と言うべき事態です。その税金がまちづくりの名目で、本件再開発事業第1期に約300億円、周辺関連事業も含めると、約700億円の支出が予定されています。  しかし、この事業の内容は、風致地区として広い空が守られてきた地域に11.2haという都内最大規模の民間再開発事業で150メートルの超高層ビル等を乱立させるものです。周辺玉川1丁目2丁目の現在の人口が約3000名のところに、1000戸のマンション住宅を増設し、人口を激増させ、一日あたり25400台の開発交通量が予想されています。その影響の大きさ、環境の激変は恐ろしいものです。
  2. 原告らは、住民の住環境をことごとく破壊し、住民の意見が全く反映されていないこの事業に、多額の税金が毎年当然のように予算化され、支出されることを知り、違法な事業への支出を監査によって差し止めてもらいたいと、住民監査請求をしました。納税者の権利として、当然のことながら、監査委員に事業の違法性を訴え、支出を差し止めてもらいたかったからです。
  3. しかし、監査請求について、監査結果ではこちらの主張はことごとく受け入れられず、(甲55号証)本件住民訴訟に及びました。 この裁判を通じて、被告世田谷区長が提出してきた証拠書類から、さらにその違法性が明らかになってきました。1つには、財務会計行為そのものの違法です。監査結果では、「支出額はこの支出にかかる起案文書、契約書、支出命令等の財務帳簿書類は全て整っており、金額の根拠明細については全て確認できた」と述べていますが、被告提出の書類では、補助金の根拠となる支出の明細は、再開発組合作成の書類はあるものの、補助金支出の対象となる支出についての再開発組合に対する第三者からの領収証、契約書などはコピーすら、一切添附されていないことがわかりました。これでは監査委員は補助金支出要綱に基づき、実績報告書について、補助金対象の支出が本当にあったといえるのかを監査することはできないのです。しかも、実績報告書の提出から、支払額の確定までが極めて短期間に行われており(時には即決で)不自然な形で数億という巨額の公費が支出されているのです。実際に、本年3月31日午後零時30分頃、世田谷区の担当課に連絡して、「年度末であるが、再開発組合からの請求書(実績報告書)について出されたのか執行されたのか、」を訪ねたところ、「現在まだ出されていない。これから請求書が届いたら処理する。事前に確認しているから問題ない。領収書類等の添附もしない。補助金要綱に従っているので問題ない。」との回答でありました。 原告は、今年度も相変わらず、公金がこのような杜撰な形で支出されていることに強い怒りを感じます。議員の政務調査費についても、少額であっても領収証のコピー也原本の添附を求めるのが世論の趨勢です。訴訟を提起して、既に2年以上が経過するのですから、住民から「違法不当」な支出と指摘していることについて、容易に改善できるのですから、直ちに改善すべきです。被告世田谷区長が、区民の意見を全く聞かないという態度はこのような点にも明白に現れています。 
  4. さらに、先行行為である、都市計画決定の経過についても、被告提出の資料や、原告の調査により違法性がより鮮明になってきました。 昭和58年3月に世田谷区が最初に作成した公文書である乙8号証の「再開発基本構想」では住宅の建築について「景観を害しないように低層高密住宅で」と記載しており、「丸子川の洪水対策」や「集中発生交通渋滞」などが地域の整備課題であることが明白に記載されていました。これは原告の主張のとおりです。 現在の計画は明らかにこれを無視しています。   さらに、昭和62年3月の作成された基本計画では「容積率は現行の500%を上限に緩和する」と書いてあります。しかし現在の事業は容積率を最大660%としました。 本件再開発事業はこれらの上位計画にことごとく違反し住民の意見を全く無視して現在の超巨大規模の事業とふくれ上がってしまったのです。 現在の再開発事業地のII街区、III街区は昭和32年に都市計画公園として、指定されていたもので、周辺一帯が風致地区で、高い建物の建築が規制されていました。  企業にとって、再開発事業による不動産建設事業は、単独で民間の開発事業よりも、経済的にさまざまの利点があります。民間開発行為の場合、事業者は自らの負担で、開発地域の面積に応じた道路や公園を工事して供出し、敷地取得に必要な移転費用、営業補償費等もすべて自らの負担となります。これに比べて、再開発事業は、公共管理者負担金、補助金という公的資金で賄うことができ、その他の税務上や融資上の利点もあります。  再開発を理由に、容積率や高度規制等も、最大限緩和され、収益率を上げることができます。駅前の権利を任意に買い占めることはできない場合でも、権利変換の手法によって、駅前の合法的な地上げを実現することも可能になります。  しかし、それには、住民の声を十分に反映させ、住民にとっても住みやすい、安全なまちにするという公共性が無ければならないのです。  本件事業は都市計画公園の位置を大幅に移動してまで、東急グループが営利目的のみのために、この事業のうまみだけを活用しようとしたのです。これは手続きの濫用に他ならないのです。 この事業の公共性について、都市工学の専門家である岩見良太郎教授は甲107号証の意見書で詳細に調査分析し、都市計画における5つの公準(誰もが承認できる幾何学の公理のように自明の基準)に当てはめ、本件再開発事業がそのいずれの基準からみても、公共性がないことを検証しました。都市再開発や再開発地区制度の要件も満たしていない制度の趣旨に反する事業であることも明白に指摘しました。これこそ、重大かつ明白な違法があるといえる具体的な内容なのです。詳細な法的構成は準備書面により主張しましたので譲りますが、原告らは、審理に当たり、是非とも岩見良太郎教授の証人尋問を採用されるように切望致します。
  5. 最後に、この裁判の本質は「まちづくりは誰のためのものか」ということ  を問いかける裁判であります。  地方公共団体の役割は地方自治法第1条の2に明記しているように、「住民の福祉の増進を図ることを基本として」行わなければなりません。地方自治法242条が定める住民監査請求、住民訴訟は住民の参政権の行使の一形態として、憲法第1条の国民主権に裏付けられる重要な権利であります。住民がこの街に住み続ける権利、素晴らしい住環境を侵害されない権利は憲法13条、22条、に 定められる基本的人権です。
  6. まちづくりによって実現されるべき公共の福祉とはまさに、住民にとって住みやすい町の創出であって、私企業によって住民の権利を収奪し、独占することではありません。   現在、昨年秋以降の世界経済の急激な変化により、本件再開発事業が、経済性の面でも危機的な波乱を内包するものであることが危ぶまれています。既に、全国では、再開発事業が、身のたけにあわない、過大規模の再開発で破綻し、行政が、公金を制限無く注ぎ込んでその破綻の尻ぬぐいをしたが、まちはコンクリートの塊で荒廃してしまったという悪しき事例が数多くあります。  被告、世田谷区長は「過ちをただすのに遅すぎることはない。」との立場から、公金の支出を直ちに中止し、再開発事業組合や東京都など関係各社に強く働きかけ、住民の声を十分に聞き、本件事業計画の縮小見直しを実現すべきであります。

以上

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